高齢者と関わる医療者なら避けては通れない心不全
でも循環器領域を苦手とする看護師も多いのでは、、、
今回は、心不全の分類とその治療に関する基礎知識について
心不全と聞いて連想するEFという2文字
EFとは、正式名称LVEF:left ventricular ejection fraction 左室収縮率である
これは、心臓がどのくらい収縮しているかを超音波検査で計測したもので、文献にもよるが、
50%未満を収縮能の低下
という。
心不全と聞いたら、心臓が動いていない
→心臓は収縮するイメージなので収縮していない病気
こう認識する新人Nsは多いだろう
しかし、実際は、
の2パターンが存在する
そして、それを示した略語が、
HFpEF・・・へふぺふ
HFrEF・・・へふれふ
HFmrEF・・・みっどれんじ?
である
それぞれ、
HFpEF EF>50%
heart failure with preserved ejection fraction
これは収縮が "preserve" 保たれているが、拡張ができていないために生じた心不全
通称、拡張障害
治療としては、
β遮断薬以外効果的とされる薬物療法はあまり確立されておらず、リスク因子(高血圧とか喫煙とかたくさん)への介入が中心になる
HFrEF EF<40%
heart failure with reduced ejection fraction
これは、収縮ができないないために生じた心不全
治療としては、
心不全ではおなじみの、ACE阻害剤/ARB、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬が推奨
まずは、
全例ACE-I/ARBを使用
→心血管死亡リスク+入院リスクの軽減効果○
(ACE-IとARBの併用は、副作用リスクが上昇するため、基本的には単剤使用)
(ACE-I(レニベース等○○プリル系)を優先使用し、不耐例に対しARB(オルメテック等○○サルタン系)という考え方)
全例β遮断薬を使用
→死亡リスク、心不全増悪リスクを低下
(アーチスト、メインテートの差は特にない)
どれくらい入れればいいか?
→心拍数の低下が死亡リスク軽減効果との相関性有り
目標心拍数
75歳以上・・・68bpm前後
75歳未満・・・60bpm未満 とされる
アルドステロン拮抗薬(高K血症がなければ)
→死亡リスク、入院リスクの改善効果
×(クレアチニンクリアランスCcr<30ml/minの腎不全合併)
×(K値>5mEq/L)
スピロノラクトンとエプレレノンの差はないが、エプレレノン(セララ)は女性化乳房はない
直接的レニン阻害薬はエビデンスはない
■植え込み型除細動器ICD
LVEF<35%症例に対する予防的ICD留置は死亡リスク軽減
HFmrEF 40%<EF<50%
heart failure with midrange ejection fraction
これは、いわゆる境界型
最近の考え方で、まだ効果的な治療戦略は確立されていない。
最近大塚製薬で開発された新薬、ARNI「エンレスト」にも期待
心不全の病態を悪化させる神経体液性因子の一つであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰な活性化を抑制するとともに、RAAS と代償的に作用する内因性のナトリウム利尿ペプチド系を増強し、神経体液性因子のバランス破綻を是正することを一剤で可能にした、新しいアプローチの薬剤。
「エンレスト」は、左室駆出率が低下した心不全(以下、HFrEF)患者を対象にした海外第Ⅲ相PARADIGM-HF試験において、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であるエナラプリルと比較し、心血管死および心不全による入院からなる複合エンドポイントのリスクを有意に20%減少させた。エナラプリルを上回る生命予後改善を統計学的な差を持って示した薬剤は、「エンレスト」が初めて。また、海外での試験結果を踏まえ、日本人HFrEF患者を対象に国内第Ⅲ相PARALLEL-HF試験を実施し、主にこれら2試験の結果に基づき製造販売承認を取得した。
以上