シャントケアとフットケアの希望の光 フィラピー
フィラピー(FIRAPY)の語源は、
FIRAPY;Far-Infrared-therapy(遠赤外線療法)
血液透析患者さんにおけるシャント機能は、透析効率に影響を与え、閉塞や狭窄を予防することはQOLの改善にもつながる可能性がある。
1990年に台湾で始まり、台湾の透析施設の90%、世界20数カ国の2000以上の透析施設で採用されている。本邦では2018年より販売開始。
米国・欧州を含む数多くのガイドラインに推奨
その後、PADにも効果を示し、フットケア方面でも使用されるようになってきている。
★フィラピーは、特殊な赤外線で非可視電磁波(光線)を発生させ、血管内皮機能を改善する効果があり、透析シャントの血流増加や開存率の改善効果・シャント機能不全の予防が期待できる。
【原理】
赤外線は非可視の電磁波であり,可視光線よりも長い波長を有す。
波長の違いに従って赤外線は、
①近赤外線(IRA:760 ~ 1400 nm)
②中赤外線(IRB:1400 ~ 3000 nm)
③遠赤外線(IRC:3000 nm ~ 1 mm)
に分類され、フィラピーは遠赤外線。
遠赤外線は皮膚や末梢組織の血流改善作用を有するため、外傷・糖尿病および末梢動脈疾患などに起因する虚血性病変や壊死に効果がある。
遠赤外線療法が血管内皮機能を改善することや,冠動脈疾患・心不全・不整脈の患者における内皮機能障害を減少させることを示唆する報告がある。
【使用方法】
週3回の血液透析施行中に30 ~ 40 分間のみ
シャント肢に皮膚から20 ~ 30 cm 離して照射
【使用上の注意】
- 照射機器と皮膚の距離を20 cm以上にすることと(添付説明書に記載あり)
- 皮膚の観察および穿刺針の抜針後の止血確認を十分に行う
- 血液凝固機能が良くない患者さんや透析終了後に止血しにくい恐れのある場合には、透析終了の1 時間前からフィラピー照射を中止する
【作用機序】
短期の温熱効果および長期の非温熱効果がアクセス血流量を増加させ、2つの効果は相加的に作用する
★短期温熱効果★
脈管の拡張とアクセス血流量の増加に○。
皮下10 mm において温度は4°C 上昇し、皮膚から20 cm 離れた箇所からの30 ~ 60 分照射により、皮膚温は漸増して38 ~ 39°C のプラトーに達する。
▶20cm離しましょうという根拠はコレ
★非温熱効果★
上腕動脈の血流依存性血管拡張反応が4%から5.8%へ増加
新生内膜過形成の抑制並びに酸化ストレスの減少
遠赤外線はNF-E2-related factor-2(Nrf2)に依存するHO-1 発現を刺激し、同時にTNF- αが誘導する接着分子の発現を抑制することが報告
▶HO-1 の高発現がフィラピーにおける血管内皮細胞の抗増殖効果および抗炎症効果を説明するものであろうと考えられている。
また、血管機能や動脈硬化性疾患の進展の指標である酸化LDL コレステロールが有意に減少
【使用効果】
シャントケアにおいては、
- 脱血不良の改善
- スチール症候群による末梢血流量の改善
- 穿刺痛の軽減
- 穿刺ミスの減少
▶結構地味だけど患者にとってはHAPPYな要素ばかり
【PADへの応用】
フィラピーは皮膚の血流改善作用を有するため外傷・糖尿病および末梢動脈疾患などに起因する皮膚の虚血性病変や壊死に使用されつつある。
- ABI値及びSPP値の変化
透析前に30分間フィラピーを照射した症例が、両足の冷感と疼痛の改善を認めた。ABIは、左0.77→0.95/右0.99→1.06, SPPは左26→50まで改善した - PAD患者に透析時にフィラピーを30分照射した6例で、照射3ヶ月後に下肢皮膚温が3ヶ月で+8.3℃~+13.7℃上昇した
- 維持透析患者の踵に生じた褥瘡に対しフィラピーを開始し、46日目(照射20回目)で治癒
- 半年間維持透析中に30分間フィラピーを照射した症例の下肢攣り頻度が、平均2.3回/月→0.7回/月へ減少した
まとめ
本邦での使用症例数が少ないのか、あまりエビデンスには至ってないようだが、1透析室に1台あってもいいかもといった感じ
PADに対して、外来使用などできるとさらに有効性はありそうです。